ヨーロッパでも有数の観光立国であるイタリア。「世界遺産、ファッション、イタリア料理」と華やかなイメージが満載で、地中海の優雅な暮らしを連想させる。しかしこの国も深い貧困の闇を抱えており、スラムで苦しむ人たちが存在する。
南部の街ナポリは町全体がスラムといってもいいくらい荒廃した地域だ。その悲惨な実情に迫っていこう。
イタリアの貧困問題
イタリアは古くから西欧諸国の中でも貧しい国の一つだ。その一つの原因が移民に対しての寛容な姿勢だろう。地中海の温暖で暮らしやすい人々は根本的に楽天的で、後のことを考えられない場合が多い。
古くからヨーロッパ中の嫌われ者だったロマ移民が多く住み、彼らのおかげで治安は悪化し、街は荒廃してスラム化した。そんな歴史から何も学ばず、近年ではアフリカからの移民をほとんど無制限に受け入れている。
自国の政情が不安定になったアフリカからの移民は、信じられないくらい簡素なゴムボートで大海を渡り、イタリアへとやってくる。彼らを助けるのは人道的に正しいこと。しかしそのおかげでまたイタリアの治安は悪化して、貧困層が増えていく。
アフリカ移民が南部に到着することもあって、イタリアの貧困率は南北で大きく違う。もちろん貧困率が高いのが南部。中でも大都市のナポリは最悪の状況に陥っている。
ナポリの生活と犯罪
ナポリの街を歩いてすぐに感じるのがゴミの多さだ。大通りにも路地裏にも無造作にゴミが置かれ、長期間にわたって放置される。ゴミは腐敗して悪臭を放ち、ハエやゴキブリなど害虫がうごめくようになる。
ナポリの街にゴミが多いということは、ナポリ市民のポイ捨てが一つの原因だ。だが問題はそこじゃない。ゴミが適切に処分されなくなるほど、行政サービスが低下しており、国や自治体がナポリの治安維持を諦めかけているのだ。
昼間でも少し路地に入れば危険を感じざるを得ない。獲物を物色するような目つきの男たちがたむろし、売春婦たちが冷やかしの声をかけてくる。ここは本当に先進国の街中なのだろうか?
実際にナポリでは白昼堂々の強盗など日常茶飯事だ。観光客丸出しの日本人など格好のターゲットで、毎日のように被害に合っている。馬鹿みたいに何十万円も財布に入れてたりするのだから自業自得だ。
この街の治安悪化の大きな原因の一つがドラッグだ。貧しいスラム住民向けの粗悪品から、効き目に定評のある高級ドラッグまで品ぞろえは豊富。すべてがマフィアの資金源となり、スラム住民たちがその駒となって働く。
麻薬中毒者と失業者、強盗、売春婦、マフィアなどが公然とうごめくナポリという街。ナポリピザだけを目当てに訪れるには少々リスクが大きいかもしれない。
イタリアの貧困を描いた映画
イタリアの貧困の実態を触れるなら、まずは「若者のすべて」をおすすめしたい。古典作品だがそこで描かれる貧困の実態は現代にも通じるものが多く、イタリアの空気感を強く感じることができる。
古くから存在した南北間の経済格差と、実質的な階級が存在するような固定化された身分。かなり考えさせられる内容になっている。