ネパールのゴミ山スラム街スクンバシの意外な実情を知る

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インドと中国という巨大な存在に挟まれたネパールという国。美しい山々にのどかな人々が暮らすこの国にも、巨大な貧困の闇が隠されている。貧困に喘ぐ者たちが暮らす場所がスクンバシと呼ばれるスラム街だ

ネパールの悲惨な貧困の実情と、スラム住民たちの暮らしの実態に深く迫っていこう。

ネパールの貧困問題


by juergen_skaa

ネパールは昔から経済発展に恵まれない国だ。それもそのはず、山岳国家なので港がないし、大規模工場が作れるような平地もない。高速道路すら作るのが難しいくらい山が険しいため、いつまで経ってもインフラが整わない。

このような環境ではいくら賃金が安くても、外国からの直接投資は呼び込めない。結果的にネパールは自国産業を育てられず、観光くらいしか資源のない小国となってしまった。資源の多くはインドからの輸入に頼っているのが現状だ。

それでも近年になって、カトマンズには巨大なショッピングモールや高級ホテルが相次いでオープンするなど、経済活性化の動きもある。そうした動きの中で富裕層はさらに金を得て、国内の格差は深刻化する。

開発や経済発展から取り残された貧しい人々は、郊外の何もない土地に寄り添って生きるようになる。そのような地域を現地の言葉で「スクンバシ」と呼ぶ。そのままスラムと同義だと思って間違いない。

スクンバシの生活と犯罪


by Andrew

スクンバシの住民は実はかなり多国籍なことが知られている。ネパール国内の田舎から都会に出てきた者もいれば、ブータンからの難民や北インドの貧しい地域から来た者もいる。共通するのは皆、職能や技術を持っておらず、金を稼ぐ手段がないということだ。

彼らに出来ることといえばゴミ漁りくらいのもの。ゴミの中から食べられるものを見つければ食べるし、衣服や金属、ペットボトルなど金に換えられるものを探していく。必死の思いで働いても所得は1日1ドルを超えることはない。

彼らの生業の都合上、スクンバシは郊外のゴミ捨て場のような場所に密集する。カトマンズでいえば空港近くの「ジャディプティ」と「テク」という地区になるだろう。どちらも旅行者の集まる中心地からそんなに遠く離れていない。

スクンバシの家々はかなり粗末なもので、ほとんどがビニールシートや段ボールで作られている。当然ながら上下水道など完備されていないため、すべての生活用水は汚染された川の水ということになる。汚物も当然川に流す

このような過酷な環境に暮らしながら、スクンバシでは犯罪が滅多に起こらないという。「世界一安全なスラム」とも一部で呼ばれるほどで、警察も立ち入らない地域なのに安全が保たれているのが不思議なところだ。

要因は色々考えられるだろうが、「ドラッグが蔓延していないこと」が挙げられるだろう。ドラッグという点ではカトマンズ中心部のタメル地区などのほうがよほど危険で、売人や麻薬で酩酊した人間もよく見かける。スクンバシの住民にはドラッグなんて買う金は無く、売人にも無視されているのが好転したようだ。

ただしいくら安全だからといって、むやみにスラムに立ち入って写真を撮るのはやめてほしい。動物園の動物扱いされた人間はどう感じるだろうか?人の立場に立って物事を考えよう。