ルワンダは世界でも最も悲惨な歴史を持つ国の一つだ。ルワンダ大虐殺と聞けば、世界史に興味がない人でも少しは知っているだろう。1994年といえばつい最近、まだ30年も経っていない時のことだ。
虐殺による悲惨な歴史は、望まない形で後の世代に受け継がれる。誰からも望まれずに生まれてきた子供たちの現状に迫っていこう。
ルワンダの歴史と貧困問題
ルワンダ虐殺の要因は「フツ族とツチ族の争い」という部族間対立として語られがちだが、実際には異なる要因がある。それは歪んだ植民地政策による弊害だ。
他のアフリカの国々と同様に、ルワンダも長く植民地として支配されてきた。この国はベルギーの支配下におかれたのだが、彼らの政策が最悪だった。
もともとフツとツチは起源も民族も変わらない似た民族。それを制度でクッキリと分け、一方を優遇して一方を差別。民族間の憎しみを作り出すことで、優位に植民地支配を行おうと考えたのだ。つまりルワンダ大虐殺はもともとベルギーが作り出したもの。この責任について語られることは滅多にない。
1994年の4月に始まったツチ族の虐殺は約100日にわたり、国内で80万人が惨殺された。単純計算で一日8000人だ。想像を絶する虐殺の末、全人口の20%が死亡する。
ここで忘れていけないのがレイプの被害者だ。虐殺にレイプは付きもので、ルワンダでは25万人の女性がレイプの被害に合い、なんとレイプ犯の子供が2万人も誕生してしまったのだ。子供たちはすでに成人し、自分の身の上を理解している。
現在のキガリには、そんな望まれずに生まれてきた人間が大量に存在する。彼らの生活とはいったいどのようなものなのだろうか。
キガリの生活と犯罪
「レイプによって孕んだ子など堕胎させればいい」こう考えるのは先進国の人間だ。だが未だに土着信仰に縛られ、まともな医療施設すら見当たらないルワンダでは不可能。母親たちは皆自然に出産してしまう。
しかし彼女たちは子供に愛情なんて注げない。当然だろう。子供の父親は自分の家族を虐殺し、自分をモノのようにレイプした最低のクズ。憎しみから新生児のうちに殺害するケースも多いという。
悲しい話だが、子供たちの悲惨な将来を考えれば殺された方がまだ幸せなのかもしれない。大きくなった望まれない子供たちは、「殺人鬼の子供」として差別されることになる。多くの場合学校などに通わせてもらえず、まともな職に就くこともできない。
子供たちは女の子なら売春婦になり、男の子ならギャングのメンバーになるのが末路だ。いずれにせよエイズなどの伝染病や、殺人に巻き込まれて早死にする。一生幸せとは無縁なのだ。
ルワンダには国内産業と呼べるものが農業くらいしか存在せず、多くの人々が終わりのない貧困に苦しみ続ける。首都キガリはその頂点。わずかな希望をもって地方部から出てきた人々が吹き溜まり、最悪の衛生環境の中で暮らすのだ。
ルワンダを描いた映画
ルワンダの悲惨な歴史を知るならやはり「ホテル・ルワンダ」が秀逸だろう。国中を恐怖と絶望に陥れた当時の様子が生々しく描かれている。途上国問題に興味がある人なら絶対に見るべき名作だ。
しかし虐殺後のルワンダの姿については忘れられがちで、だれからも触れられないのが現状。無策な政府はイギリスのサッカーチーム「アーセナル」のスポンサーとなり、何十億円も支出するなど意味の分からない政策に終始している。いったい誰がこの国を救えるのだろうか。
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