みなさんはジンバブエについてどういう印象を持っているだろうか。あの最悪のハイパーインフレのことはご存知だろう。1アメリカドルが1000億ジンバブエドルという狂気のレートに突入し、人々の暮らしが絶望的に壊滅した。
そんなジンバブエドルが廃止され、世界最悪の独裁者ムガベも大統領から退いた今、ジンバブエでは何が起きているのだろうか。その実態に深く迫っていこう。
ジンバブエの歴史と貧困問題
ジンバブエは他のアフリカ諸国と同様、欧米による植民地支配の悲惨な歴史を持つ。この国はイギリスが支配し、国土のすべては白人の私有農場とされた。現地住民は全員奴隷として過酷な労働を強いられ、一切の自由は与えられなかった。
第二次世界大戦後に独立の動きが始まるが、イギリスは簡単に退かなかった。この頃にはすでに白人所有農場は、効率的なシステムにより多大な生産量と利益を得るようになっていたのだ。そのような場所を明け渡すのは辛いだろう。
相次ぐクーデターや内戦の末、ジンバブエは最後に独立を果たす。しかしここからが本当の地獄だった。1987年には世界でも最も無能な独裁者の一人、ムガベ大統領が誕生し、国内経済は完全に崩壊した。
ムガベは自身の独裁政治への批判をそらすため、白人所有農場を奪い黒人に分配した。これにより白人の持っていたノウハウが消滅し、黒人農家の所得も激減した。
国民全体が貧困にあえぐ中、ムガベは紙幣を大量に刷ることでこれを解消しようとした。「お金がなければ作ればいい」という小学生並みの発想を、そのまま行動に移してしまったのだ。結果的にジンバブエドルの国際的信用は地に落ち、前代未聞のハイパーインフレが発生した。
2010年のジンバブエでの失業率は95%、貧困率は70%という驚異の水準。この国のスラム街に住む住民たちの暮らしは過酷の極みだ。
ハラレスラムの生活と犯罪
国民100人中95人が無職のジンバブエという国。都市の貧困街に住む人々の暮らしは劣悪の極みだ。不法占拠のバラックには上下水道などロクに無く、人々は糞尿とゴミにまみれて悪臭の中で生活する。
過酷な現実から逃避するため、男たちは粗悪なドラッグに溺れる。この国では風邪薬のシロップが安価なドラッグとして利用されており、これがスラムの治安悪化につながっている。ドラッグで酩酊した人間に善悪の区別など無く、強盗も殺人もレイプも何でもあり。
スラムでは圧倒的に仕事が不足しているため、女性たちはゴミ山に行って売れるものや食べられるものを探す。ギャングたちは数少ない富裕層を狙った強盗で金を得る。これしかスラムで生きる術はないのだ。
2018年にムガベが退任したって、スラムが直ちに良くなることなんてない。圧倒的な貧困の連鎖は続いていく。
ちなみにこの国で刑務所に入ることになればもう最悪。現地でも「地獄への入り口」と言われるほど状況は過酷で、重傷を負って腸が外に出た人も、末期のエイズ患者も同じ牢獄に入れられる。簡単にいえば「死あるのみ」だ。