みなさんはジャマイカという国についてどういうイメージをお持ちだろうか。やはりレゲエ音楽と大麻は圧倒的に人気。日本人でもレゲエと大麻のためにジャマイカを訪れる旅行者がいるほどだ。
しかしこの国を覆う貧困の闇は深く、解決の糸口すら見いだせないのが現状。中でも首都キングストンは、町全体がスラム街といっていいほど悲惨だ。その実態に深く迫っていこう。
ジャマイカの歴史と貧困問題
カリブの島国ジャマイカは、植民地支配されていった他の中南米の国々とは少し異なる歴史を持つ。一時はイギリスに植民地として支配されるのだが、現地に住む黒人奴隷たちの反発はすさまじく、農園から逃げ出して山奥に籠るものが続出した。
彼らは自給自足の共同体を形成し、イギリス軍との間でゲリラ戦を展開。地の利で勝るゲリラ軍は見事勝利し、中南米でもいち早く植民地支配から抜け出し、奴隷という身分から解放された。
ここまで順風満帆なはずのジャマイカだが、なぜか彼らはいつも貧困に悩まされ続けている。その理由はいろいろ考えられるだろう。国内産業が皆無で仕事は無く、政府から国民まで全員が援助に頼る体質で、自分から動こうとしない。マリファナによる楽観も影響しているのかもしれない。
結果的に国全体がスラムのような様相で、外国人観光客向けの高級ホテルだけが別世界。周囲は高いフェンスで守られ、幻想の楽園を作ることとなった。
キングストンの生活と犯罪
キングストンは地獄のように治安が悪い街だ。汚職にまみれた警察は機能をほぼ停止しており、現地の治安はマフィアが取り仕切る。彼らは必ず銃器を携帯しており、ちょっとしたトラブルでそれを使用する。そのため流れ弾で死亡する一般市民が後を絶たない。
強盗や殺人も日常茶飯事のこの都市において、もっとも非道なのがレイプだ。この国には女性の権利なんて概念すらなく、スラムに住む幼い少女はほぼ必ずレイプ被害に合う。
レイプの加害者は身内である場合も多く、母親のボーイフレンドが娘を犯すなど常軌を逸した行為も普通。結果的に10代にして望まない妊娠を経験する少女が続出。彼女らに子供を育てる能力はなく、大量の子供たちが孤児院へ送られる。
孤児院の環境も最悪で、子供たちは食べるものすらロクに与えられない。子供の数が多過ぎるせいで愛情を与えられず、そこから憎悪の塊となった犯罪マシーンとしてのストリートチルドレンが誕生する。
彼らは過酷な現実から目をそらすためにシンナーや粗悪なドラッグに手を出し、善悪の区別すら持たない彼らは町の治安をさらに悪化させる。新たなレイプ魔が誕生してしまうのだ。
常に仕事がなく貧困状態のスラム住民は、物乞いという行為に恥すら感じない。「貧しいものは与えられて当然」という考えが根付いており、自立しようなんて夢にも思わないのだ。
こんな場所を日本人の観光客が歩けばどうなるか。運が良ければ強盗に財布や携帯を取られるだけで済むだろう。運が悪い場合はどうなっても知らない。
ジャマイカの貧困を描いた作品
ジャマイカの実情に触れたければ「ジャマイカ 楽園の真実」が秀逸だ。観光客向けの楽園のイメージと、本当のジャマイカが対比的に描かれており、この国の真実の姿が映し出されている。
この映画を見た後なら、レゲエの歌詞の意味も深く理解できるかもしれない。いずれにせよジャマイカの人々の暮らしは悲惨の極みだ。