ドミニカ最悪の奴隷スラム街ハイチ人集落の悲惨な実情を知る

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みなさんはドミニカという国についてどういう印象を持つだろうか。メジャーリーグが好きな人ならその国名はよく耳にすることだろう。だが実際にドミニカがどこに位置して、どのくらいの大きさの国なのか知っている日本人は数少ない。

カリブに浮かぶ小さな島には、貧困と差別にまみれた劣悪なスラム街がある。その悲惨な実態に深く迫っていこう。

ドミニカの歴史と貧困問題


by Matthias Ripp

カリブの島国ドミニカは、中南米の他の国々と同様に植民地支配による悲惨な歴史を強いられた。この国では金鉱山が見つかったことにより、もともと現地にいた住民は奴隷として強制労働。過酷な労働と疫病により、原住民のほぼ全員が死亡するという惨事。

野蛮なスペイン人は現地住民を全滅させただけでは気が済まず、金鉱山の労働力として新たな黒人奴隷を仕入れてくる。歴史上最も野蛮で非道な侵略者とは白人キリスト教徒。この事実を忘れてはいけない。

各国の独立の流れに乗り、ドミニカでも奴隷解放の動きが始まる。たくさんの血が流された内戦の後、見事独立を勝ち取るものの、案の定指導者は独裁者となり、どうしようもない政策を連発。経済活動は壊滅し、国は膨大な負債を背負う。

比較的治安が落ち着き、カリブの国々の中ではマシな状況にあるドミニカも、いまだに過去の負債に悩まされ続け、そのせいで貧困層の暮らしは一向によくならない。

中でもこの国の分厚い貧困層を形成しているのがハイチ人だ。ドミニカとハイチは一つの島を分け合っており、国境を違法に侵略してドミニカに入国するハイチ人が後を絶たないのだ。

ハイチ人がドミニカに不法移民としてやってくる原因は、ハイチ国内の過酷な貧困にある。ハイチの政情はドミニカとは比べ物にならないほど貧弱で、2010年のハイチ地震によりすべてが壊滅した。そこでより裕福な隣国にチャンスを求めて出向くわけだ。

しかしいくら裕福な国に行ったって、教育もロクに受けていない彼らにチャンスなど巡ってくるはずもない。あるのはさらなる貧困と差別だけだ。

ハイチ人スラムの生活と犯罪


by Göran Höglund (Kartläsarn)

ドミニカ共和国北西部の、ハイチ国境に近いエルセロという街には不法入国のハイチ人が数多く住む。ドミニカの人口が900万人に対して、不法移民のハイチ人は80万人に上り、その存在は現地でもかなり強いものになっている。

エルセロはドミニカでも貧しい地域で、ドミニカ人も非識字率が高く、栄養不足で死亡する子供も数多い。そんな場所に大量のハイチ人が流れ込めばどうなるか。ドミニカ人の憎悪がハイチ人を襲うのだ。

ハイチ人スラムではドミニカ人によるリンチや強盗、放火、殺人、レイプなどの凶悪犯罪が多発する。彼らは自分たちの貧困の原因をハイチ人に転嫁し、一方的な憎悪で暴力に出るのだ。

憎悪と差別の原因は、両国の人種の違いもあるだろう。ドミニカ人の多くが混血であるのに対し、ハイチ人は純粋な黒人。混血の黒人が、より肌の黒い黒人を差別するのだ。地獄のような図式だろう。

この地域ではハイチ人、ドミニカ人を問わず女性の人権が皆無であり、10代前半で妊娠する少女が大半を占める。避妊もせずに奔放な性交渉を繰り返し、赤ちゃんができれば男は逃げ出し、少女が不幸なシングルマザーとなるのだ。

彼女たちに子供を育てる能力なんてもちろんなく、捨てられてストリートチルドレンが大量に生産される。ストリートチルドレンたちはまた限りない憎悪で犯罪を犯し続け、貧困と暴力の連鎖が続いていく。

ドミニカでのハイチ人の貧困を描いた作品

ドミニカのハイチ人スラムの現状を知るなら「The Price of Sugar」が秀逸だ。ハイチからの出稼ぎで、ドミニカのサトウキビ畑で働く労働者たちのドキュメンタリー作品だ。

彼らの給料は一日90米セント程で、現金で支給されずにファーム内で使える金券のみ。これが意味するのは「彼らはいくら働いても現金をもって故郷に帰ることができない」ということ。まさに現代の奴隷だ。

強制収容所のような粗悪なバラックに、何十人ものハイチ人が詰め込まれる様相は、北朝鮮やナチスのそれと何が違うのか。深く考えさせられる内容になっている。