バングラデシュ最悪の売春スラム街タンガイルの実情を知る

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アジアの中でも特に貧しい印象を持たれるバングラデシュという国。ここには想像を上回る悲惨な貧困の闇があり、今も多くの人々が苦しい生活を強いられている。中でもタンガイルのスラムは特殊な場所だ。

タンガイルに生きる女性たちの壮絶な生活と、その背景にある搾取の実態に迫っていこう。

タンガイルスラムの成り立ち


by Sudipta Arka Das

タンガイルとはバングラデシュ中部、首都ダッカから北西に約70キロ離れた場所にある都市の名称だ。この場所にはバングラデシュの男なら誰もが知る有名なスラムが存在する。それがタンガイルの売春スラムだ。

国民の大半をイスラム教徒が占めるバングラデシュにおいて、本来売春など決して許されない行為。しかしこのスラム内での売春行為は政府公認で、女を買っても罪に問われることはない。

その成り立ちについては謎の部分が大きいのだが、厳しい暮らしに耐える男たちのガス抜きというのが売春街ができた理由だろう。この売春街は庶民向けのため、行為の値段も法外に安い。一回1ドル以下でも女性を買える。

この地域で働く売春婦の数は1000人を超えるとも言われ、狭い範囲に密集して売春宿が経営される。中には何世代も売春で生計を立ててきた売春一家もいるし、地方部から人身売買で連れてこられた少女もいる。より悲惨なのはもちろん人身売買の少女だ。

タンガイルスラムの生活と犯罪


by Sudipta Arka Das

タンガイルスラムに連れてこられる女性の多くは、貧しい農村の出身者だ。家族は約3万円というわずかな金のために我が子を差し出す。子供を売り飛ばす母親を責めるのは簡単だ。しかしバングラデシュの農村部の貧困は想像を絶する。モラルだけでは片づけられない問題がそこにはある。

売春宿に買い取られた少女は、幼いことから様々な名目で借金漬けにされる。売春により儲けた金は宿の主人に管理され、そこから借金を返していく。しかし少女たちは簡単な計算もできなければ、文字も読めない人がほとんど。いったい自分がいくら借金を抱えていて、どれだけ返済したのかもわからない。事実上の奴隷状態の出来上がりだ。

それでも売春婦として客が付く間は人間扱いされる。食べるものや寝る場所には困らないし、普通のスラム住民に比べれば環境は良い。

しかし彼女たちの多くは深刻な健康問題を抱える。それがステロイド中毒だ。バングラデシュの男性は豊満な女性を好むため、華奢な少女たちは売春宿の主人からステロイドを与えられ、飲むことを強要されるのだ。

しかもこのステロイドは牛を太らせるために使われる粗悪なもの。雑貨屋に行けば1ドル以下で手に入り、処方箋などもちろんいらない。この危険な薬物を常飲することにより、健康的だった少女たちは不自然に太っていき、慢性的な頭痛などに悩まされる。

ステロイド中毒は病気に対する免疫力も奪うため、彼女らの多くはちょっとした病気で早死にする。ただし年老いた売春婦の過酷な現実を見れば、ステロイドで早死にする方が幸せなのかもしれない。

歳をとって美しさを失った売春婦たちは、売春宿にはもう置いてもらえない。元売春婦など故郷でも受け入れてもらえるはずがなく、彼女らの多くは物乞いのホームレスとして一生を終える。

タンガイルスラムの変遷

200年以上も続いてきたタンガイルスラムは、2014年に突如として閉鎖してしまう。理由は国際的な批判が集まったことにある。ステロイド中毒の売春婦たちの姿はあまりにも酷く、人権団体が黙っていなかった。

1000人以上いた売春婦たちのその後の行方は知られていない。故郷に戻ることのできない彼女らは、マフィアが管理する地下売春宿に送られるか、少し早めに物乞いになるか。いずれにせよスラム解体で幸せになる道などない。

ある情報では一旦解体されたタンガイルはすでに元通りの状況とも言われているし、何が本当で何が嘘なのかわからない。いずれにせよバングラデシュには不幸な売春婦たちが生き続けている。

バングラデシュの貧困を描いた作品

バングラデシュの女性たちの過酷な現状を知るには、VICE Japanの「バングラデシュの女性が直面する過酷な現実」というドキュメンタリーが秀逸だ。舞台はタンガイルではないのだが、同様に公的に認められた巨大な売春街。悲惨な実情に触れることができる。