インドネシアの超格差スラム街コタ地区の意外な実情を知る

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バリ島やロンボク島など世界有数のビーチリゾートを有するインドネシアという国。その経済発展は目覚ましく、ジャカルタは東南アジアでも随一の経済都市に成り上がった。しかしそこには貧困と格差という問題が大きく闇を形成している。

ジャカルタのコタ地区はそんなインドネシアの闇が見える部分。実情に深く迫っていこう。

ジャカルタの貧困問題


by Przemek Pietrak

この20年で劇的な経済発展を遂げたジャカルタという都市の姿は、われわれがイメージする大都市の姿とは全く異なる高級ホテルやショッピングモールが立ち並ぶ様は立派だが、そのすぐ脇には巨大なスラム街が形成されている。

ジャカルタではそのスラム住民の数が異様。なにしろ国民の8割の2億人が貧困層であり、彼らは経済発展の恩恵など一切受けられない。何十年も前から不衛生なスラム街のような場所で、同じような生活を強いられているのだ。

大きな貧困問題の要因は人口構造にある。インドネシアには人口の約5%ほどに中華系の人々がいて、彼らが富を独占しているのだ。「インドネシア経済の80%は中華系のもの」と言われるほどで、実質的に階級が固定化している。

階級が固定化された社会では、貧困層はいくら努力しても金持ちにはなれない。もちろん例外はある。マレー系の貧しい家に育った子供でも、たくさん勉強して出世するものも当然存在する。しかしその数はごく少数。ほとんどの人々はスラム街でその一生を終え、貧困は脈々と連鎖していく。

このような背景により、中華系の資本家が爆発的に金を得る一方で、庶民の暮らしはいつまでも変わらない。超格差社会の出来上がりだ。

インドネシアの格差から見れば、日本の格差問題なんて笑えるレベル。だって日本はコンビニバイトでも一か月適当に働けば10万円を得られる国だ。インドネシアの底辺層は、1日1ドル以下の所得で生活するものもたくさんいる。

コタ地区の生活と犯罪


by Alexis Gravel

ジャカルタの中でインドネシアの貧困の実態が最もよく見えるのがコタ地区だろう。コタ地区全体がスラムというわけではなく、そこには観光地やショッピングモールだってある。すべてが密集して隣り合っているのが実情だ。

コタ地区でも最も貧しいスラムは鉄道脇や川沿いなどを、不法占拠する形で形成されている。それらの場所には当然上下水道などなく、不衛生極まりない暮らしを強いられる。水が悪いので伝染病も当然蔓延する

ロクな仕事もなく男たちは昼間から路上にたむろし、多すぎる子供たちが無邪気に走り回る。そこには悲惨な貧困があるのは当然だが、他の国のスラムのような荒廃した雰囲気は意外とない

それもそのはずだろう。スラムのような場所に住む彼らにとって、その生活は何十年も前から続けてきた普通の暮らし。経済発展により格差は進行するが、そんなことは普段の暮らしに関係のない問題だ。

実際にコタ地区では強盗や殺人、レイプのような凶悪犯罪はそれほど無く、ドラッグが蔓延する様子も少ない。スリや置き引きなどの軽犯罪はあるだろうが、これも本人が気を付けておけば対処できるレベル。

だからといって旅行者が気軽にスラムエリアに立ち入るのはよくない。住民にはそれぞれの暮らしがあり、誰だって動物園の動物のように写真を撮られれば気分は良くない。住民の暮らしを尊重してほしい。