南半球の雄大な島国オーストラリア。豊かな自然に恵まれ、ビーチリゾート目当ての観光客も多い先進国だ。しかしこの場所の原住民を襲った悲惨な歴史と、残虐行為の後遺症を忘れてはいけない。
シドニーの中心部にある最悪のスラム街レッドファーンは、原住民たちの歴史と現状を知るには絶好の場所。その実情に深く迫っていこう。
アボリジニ問題
ご存知の通りオーストラリアはもともと、複数の言語族から構成される多様な原住民の居住地だった。彼らは通称アボリジニと呼ばれ、独自の狩猟方法や音楽文化を持ち、尊重されるべき集団だった。
しかしイギリスから数千人の入植者が上陸したことで環境は一変する。入植者の多くは流刑民であり、アボリジニよりよっぽど野蛮で非道な連中であった。彼らは「スポーツハンティング」と称してアボリジニを虐殺していく。「今日は17人殺した」などと書かれている日記も残っている。
アボリジニの虐殺行為は白人政府公認となり、彼らの居住地の水に毒を盛ったり、大規模な編成体により村を絶滅させたりした。これらの行為は白人の遊びとして行われていた。
外界から隔離された島に住むアボリジニたちは、アルコールに対する耐性すら持たない。入植者たちによって持ち込まれた梅毒やインフルエンザなどの病気にも無防備で、たくさんのアボリジニが感染病によって死亡した。
結果的に50万から100万人はいたとされるアボリジニの人口は、1920年には7万人にまで減少した。9割の人間が白人に殺されたのだ。そのあとは「保護政策」という名のもとに、アボリジニに対する差別と隔離が行われ、彼らの文化を事実上消滅させるように仕向けられていった。
そうした保護政策の一環として、シドニー中心部の「レッドファーン」という地区に、アボリジニ専用の居住区が設けられた。ここがオーストラリアでも最悪クラスのスラムが誕生する。
レッドファーンの生活と犯罪
当然のことながら、アボリジニ達は白人社会に対して強い怒りをもって生きている。祖先の9割を遊びで虐殺された彼らの怒りなんて、我々にはとても想像もつかない。彼らが白人を襲ったって誰も文句は言えないだろう。
アボリジニ達には無償で住宅が与えられ、毎月給付金も国から出ている。だから生活するだけなら何不自由ないのだが、アボリジニ達の多くは薬物中毒に陥っている。もともとアルコールすらしらなかった彼らにとって、薬物の効力は大きすぎた。
結果的にレッドファーン周辺では強盗や殺人、レイプといった犯罪が横行。ドラッグで酩酊した彼らに善悪の区別などなく、民族の敵である白人など無意味に殺しても良い対象。強盗のついでに無意味に殺人を犯すパターンも数多いという。
過去の過ちという負い目を持つオーストラリア政府は、こうしたアボリジニの犯罪者に対しても強く対抗できない。彼らは殺人を犯しても逮捕すらされず、レッドファーンは事実上の無法地帯となっている。
ちなみに「日本人は白人じゃないから大丈夫」なんて安易な考えでレッドファーンに立ち入るのは絶対にやめたほうがいい。アボリジニにとって他の民族はすべて敵だ。強盗殺人の被害にあっても文句は言えない。
アボリジニを描いた映画
アボリジニの悲惨な歴史を描いた作品は数多いが、私のおすすめは「裸足の1500マイル」だ。アボリジニに対する政策として、子供の連れ去り行為が公然と行われたのはオーストラリア最悪の歴史の一つ。アボリジニの孤児たちに関するストーリーは考えさせられる内容になっている。
この映画を見たり、アボリジニの歴史を学んだあとにはオーストラリアに対する目が変わると思う。彼ら白人社会がいかに野蛮で最低なものか知るべきだろう。