ルーマニアの孤児スラム街ブカレストの悲惨な実情を知る

東欧の国々というのは日本人である我々にとって関わりが非常に薄い。ルーマニアという国がヨーロッパのどこに位置するのかも知らない人がほとんどだろう。そして「ヨーロッパだから貧困もそれほど酷くない」と思っているかもしれない。

しかしこの国が抱える闇は非常に深い。子供たちはドラッグとエイズにまみれながら、男女問わず売春で生活していたりするのだ。その悲惨な実情に迫っていこう。

ルーマニアの貧困問題


by fusion-of-horizons

ルーマニアはソビエト連邦に属した旧共産主義国だ。もちろん今では資本主義と民主主義によって正常な状態になっているが、共産主義時代の爪痕は大きな社会問題として国民を苦しめている

この国には共産主義時代に、ニコラエ・チャウシェスクという独裁者が存在した。彼は国を動かすほどの才覚が一切ないままに、思いつきだけで大胆な政策を実行していく。その一つが「子だくさん政策」だった。

「子供は国の力」という単純な発想から、子供をたくさん産んだものに金を渡し、人工中絶や避妊は一切禁止した。避妊の禁止とは想像を絶する愚策だろう。中学生が考えてもわかりそうなものだ。

この政策の結果、翌年以降にルーマニアにはたくさんの子供たちが誕生した。その中には両親の目先の金目当てで生まれた子もいれば、望まない妊娠により生まれた子もたくさんいた。

共産主義体制が続く間はまだ良かった。子だくさんの家庭には毎月国から奨学金が支給され、金に困らず子供を育てることができた。しかしその後の共産主義政権崩壊により一変する。子だくさん家庭が金を受け取ることができなくなったのだ。

同時期に起きた経済恐慌と重なり、各家庭は貧困のどん底に陥る。そこで子供を捨てる親が続出したのだ。当時のルーマニアには福祉施設などの数も足りておらず、ストリートチルドレンになる子供たちが大量発生した。

現在、首都ブカレストのストリートチルドレンの数は数千から1万人ともいわれる。負の連鎖は脈々と受け継がれているのだ。

ブカレストのストリートチルドレンと犯罪


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ブカレストの路上で生活するストリートチルドレンの中には、西ヨーロッパ諸国から訪れるセックスツーリストの相手をして生計を立てるものが多い。もちろん子供たちが自ら望んで売春を行うわけではない。マフィアなどの道具として動いているだけだ。

子供たちは養護施設での注射器使いまわしなどにより、エイズに感染している者が多い。そして売春ツアーに参加する汚い大人たちはコンドームを使用しない。結果的にさらにエイズが蔓延し、西ヨーロッパへエイズが持ち込まれる大きな要因としても問題となった。

食事も十分にとることができないストリートチルドレン達は、シンナーなどの粗悪なドラッグで空腹を紛らわせる。薬物依存者は一生その生活から抜け出せず、周辺の治安をさらに悪化させるのだ。

かつてのストリートチルドレンは腕力を持った大人になり、強盗やレイプなどの犯罪にも手を染めるようになる。麻薬は彼らの重要な資金源であり、自身もその使用者であることがほとんどだ。

両親に捨てられて幼いころから売春で生計を立て、ドラッグを愛用する彼らに我々の常識は一切通用しない。ブカレストを訪れた際は、できるだけ人通りの多い大通りだけを歩き、夕方以降は外出を避けるなど心がけてほしい。

ブカレストの貧困を描いた映画

ブカレストの貧困とスラム街について知りたければ、「トトとふたりの姉」という映画が秀逸なのでおすすめしたい。ブカレストのスラム街を舞台に、幼い兄弟が生きる過酷な日常がリアルに描かれている。

映画はフィクション作品だが、そこで映し出される貧困とドラッグの闇は現実そのもの。救いようのない現実に直面させられる。