ナイジェリアの水上スラム街マココの実情を知る

日本から遠く離れたナイジェリアという国。この国がアフリカのどこにあるかも知らない人が多いことだろう。場所も文化も遠く離れすぎて想像することも難しいだろうが、ナイジェリアにも貧困とスラムの壮絶な問題が存在する

ナイジェリアのスラム街マココは、世界でも類を見ない巨大な水上スラムだ。その稀有な成り立ちと、そこに潜む問題をじっくりと見ていくことにしよう。

マココの成り立ち


by Heinrich-Böll-Stiftung

マココの歴史は欧米による植民地支配時代に始まる。もともとベナンとナイジェリアにまたがる広い範囲で漁業生活をしていたエグン族。彼らの生活は水上の遊牧民そのもので、国境もパスポートもなく自由に暮らしていた。

そんな中ナイジェリアはイギリスの植民地、ベナンはフランスの植民地と国境が引かれ、彼らの自由な生活は突如許されなくなったのだ。繰り返すが、植民地支配がはじまるまで、このエリアに国境なんて存在しなかったのだ。

先祖代々にわたって水上生活をしてきたエグン族にとって、環境が変わっても陸上で普通の職に就くなど不可能。そこでナイジェリアの首都ラゴスの海岸線に水上集落をつくり、そこに定住するようになったのだ

世界最大の水上スラムの成り立ちにも、欧米による歪んだ植民地支配の爪痕が残っていた。許しがたいことだがこれが現実。目を背けるわけにはいかない。

マココの生活

水上家屋といえばベネチアのような優雅なイメージがあるかもしれないが、マココの場合はそんなイメージとは正反対。10万人を超えるともいわれる住民が出す生活排水とゴミ、汚物によって海はヘドロ状態。当然のようにきつい悪臭が立ち込める。

各家屋は粗雑なつくりで隙間だらけ。雨風をまともにしのげるようには見えない。下水設備など当然存在しない。排泄物はそのまま海に落とすだけだ。

汚い水に隣接する場所では、当然のように伝染病が蔓延する。エイズによる死者も多く、新生児死亡率もかなりの水準らしい。

そんな劣悪な環境からは想像しづらいが、スラム住民の平均月収はラゴス市民の何倍にもなるという。主な収入源はナマズ漁で、これがかなりの稼ぎになるというのだ。

家はボロイけど金は持っているマココの住民たち。そこには商店や食堂はもちろん、散髪屋に電気修理屋、銀行の代行屋まで存在する。想像とは裏腹の豊かな暮らしが確かに存在する。

マココに蔓延る犯罪と政府の対応


by Heinrich-Böll-Stiftung

マココには警察が立ち入ることが滅多にない。そのため治安は現地のマフィアが担っており、マフィア同士の抗争も絶えない。大金を生むナマズ漁の利権も絡み、住民同士の殺人も多いという。

深刻なのはレイプや強制売春など性犯罪。女性の権利が全く認められていない環境が存在し、10代前半での望まない妊娠も多いという。中絶は文化的に許されないため、不幸の連鎖が永久に続くのだ。

10万人規模の巨大集落にもかかわらず、マココはナイジェリアの地図にも載っていない。政府としては存在すら認められない場所なのだ。

事前の告知すらまともに無く、スラムの一部を強制排除する動きが定期的に起こり、そのたびにホームレスを大量製造している。マココの住民は陸上ではなにもできない。貧困をさらに助長するだけの無意味な政策だ。

歪んだ植民地支配の歴史と、現在でも何も学ばない無能な政府。彼らのおかげでアフリカの貧困層に光が差すことはない。

マココは映画の舞台にならない

ナイジェリアは映画産業が活発で、一部では「ノリウッド」といわれるくらい。しかし水上スラムのマココは映画の舞台として取り上げられない。ハリウッドでも欧米でもそうだ。白人としてはできるだけ表に出したくない場所なのだろう。

映画で有名になるスラムよりも、だれにも知られず苦しみ続けるスラムのほうが問題は大きかったりする。マココとエグン族の問題に解決が訪れることはあり得るのだろうか。