砂漠の楽園ドバイ。豊富な天然資源による莫大な富を武器に、一気に世界有数のリゾートとなったこの場所は、貧困などとは無縁と思われる人も多いだろう。確かにドバイ人は全員裕福極まりない。しかしその裏で苦しんでいるのが外国人労働者たちだ。
ドバイにおける労働者たちの様子はまさに現代の奴隷。その悲惨な実情に迫っていこう。
ドバイの労働者問題
ドバイには世界屈指の高級ホテルの数々や、世界一の高さを誇るブルジュ・カリファなど現実離れした建物が立ち並ぶ。それらの建造物は、いくら金があっても自動的に建つものではない。人の手による工事が必要だ。しかし裕福なドバイ人は肉体労働などしない。
そこで活用されたのが外国人労働者だ。肉体労働者は主にインドやパキスタン、バングラデシュの人たちが利用され、甘い言葉と共に彼らをドバイにいざなった。「ドバイで何年か働けば大金をもって故郷に帰れる」こう考えて皆ドバイに来たのだ。
ドバイにやってくる外国人労働者の数は膨大で、ドバイの人口の9割を占める規模になる。結果的に街を歩けば外国人しか見かけないという奇妙な状況が出来上がった。
しかしドバイの人間にとって途上国出身の労働者など、人とも扱う必要のない些細な存在だ。彼らへの待遇は常に最悪レベルで、待遇や仕事に関して少しでも意見すれば牢獄行き。事実上の死刑が宣告される。
未だに国際社会とのかかわりも希薄なアラブの国の指導者にとって、人権問題などどうでもよい戯言。いくら非難を浴びても労働者たちの待遇は改善せず、彼らの救いようのない地獄は続いていく。
ドバイスラムの生活
インドやバングラデシュ出身の肉体労働者たちは、高層ビル建築のすぐ脇にある簡素な小屋で寝起きする。この小屋には当然クーラーなどなく、トイレは共用だが常に壊れている。結果的に労働者たちの糞尿は垂れ流しで、周辺にひどい臭いをまき散らしている。
忘れてはならないのがこの国の気温だ。砂漠のど真ん中にあるドバイは、常人は歩くのもためらう暑さ。最高気温は50度にも達するなかで、過酷な労働を休みなく強いられる。
国際批判を受けて気温が50度以上の日の労働を禁止する法律ができたが、その日以降ドバイの気温が公式に50度を超える日は無くなった。労働者など人ではないのだから、休ませる必要はないというのが彼らの考え方だ。
労働者たちの待遇は当初説明されていたものより格段に悪く、何かと名目を付けて多額の借金を抱えさせられる。結果的に働いても働いても借金ばかりが残り、家族のもとへ帰ることすらできなくなるのだ。
前述のように酷い待遇を強いているのは企業だけの問題じゃない。ドバイという国として労働者を守る気なんて一切なく、労働基準監督署のようなところに駆け込んだって味方はしてくれない。牢獄に送られるだけだ。
パスポートを取り上げられており、現金なんて小銭程度しか持っていない労働者たちに逃げ場はなく、一生奴隷として働く以外の選択肢はない。これが優美なドバイの現実だ。
ドバイの貧困を描いた作品
ドバイの労働者たちの過酷な現実を映像として残したのが「ドバイの奴隷たち – Slaves of Dubai」だ。BBCレポーターによる渾身の取材で、その悲惨な実情がリアルに描かれている。ユーチューブに掲載されているので一度は見てほしい。きっとドバイの見え方が変わるはずだ。