インド・ムンバイのスラム街ダラヴィーの意外な実情

日本人にとって心理的な距離感があるインドという国。イメージできるのは「タージマハル、IT先進国、カレー、ヒンドゥー教」くらいという人も多いだろう。神秘の国インドにも貧困問題は蔓延り、貧富の格差は拡大し続ける。

ムンバイにあるインド最大のスラム街、ダラヴィーは映画の影響で絶大な知名度を誇る場所だ。旅行者でも気軽に立ち入ることのできるこのスラムで、住民は今何を思い、どのような生活を送っているのだろうか。

ダラヴィースラムとは何か


by Thomas Galvez

ダラヴィーとはムンバイ中心部に位置する広大な地区の名前だ。旅行者もよく利用するジャンクション駅に隣接しており、駅の高架からもその姿が見られる。建物というにはあまりに貧弱な建築物が密集し、その中には無数の人達が蟻のように行き交う。

しかしダラヴィーにはスラムにありがちな悲壮感がそれほど感じられない。人々の表情には明るさがあり、路地もきれいに保たれている。特有の汗臭さは感じるが、糞尿が垂れ流される他のスラムのような不衛生さはない。

少なくとも昼間は凶悪犯罪の気配などないし、子供たちが無邪気に遊ぶ様子は本当にのどか。果たしてこれはスラムなのか?その定義が怪しくなる場所だ。

実際の話、その場所がスラムという位置づけになるか否かは、外部からの目によるものが大きい。その国のことを知らない人が来て、「ここは建物も汚くて貧しそうだからスラム」と決めるのだ。

確かにダラヴィの住民は貧しい。日々の暮らしがやっとの収入しか得られない人も多く、女性の権利意識はまだまだ低い。しかしそれがスラムと呼べるのかは分からない。

ダラヴィスラムでの仕事・産業

ダラヴィにはあらゆる産業が存在する。食堂や雑貨屋などの定番産業から、クリーニング屋、弁当の配達屋、家電の修理屋まで様々。特筆すべきはリサイクル関連の産業だ

ご存知の通りカーストシステムに支配されるインドでは、ゴミにまつわる産業は最も階級が低く、虐げられる仕事の一つだ。しかしそのリサイクルシステムは海外からも注目されるほど整っており、ゴミの85%がリサイクルされるとのデータが出ているほど。

樹脂やプラスチックなどを材料別に選別、運搬、洗浄、加工する業者がそれぞれ確立されており、稚拙な道具で高度な仕事が施される。一連のサイクルがスラム内だけで成り立っているのだ

そういった仕事の様子は現地NGOなどのスタディーツアーに参加することで見学できるくれぐれも個人で勝手に立ち入って写真を撮るなどの無礼は慎んでほしい。自分たちが動物園の動物のように扱われれば、だれだって気分が良くはないだろう。

ダラヴィスラムを描いた映画


by Michał Huniewicz

ダラヴィスラムといえば「スラムドッグ$ミリオネア」。アカデミー賞をはじめ、全米、全世界の映画賞を獲得した大ヒット作品だ。インド人作家の小説が原作となっており、イギリス人監督により映画化された。

一人の少年の壮絶な人生を扱ったこの作品。フィクションでありながら生々しい感触を伴った現実感があり、ダラヴィの様子が身近に感じられる。どんな場所か知りたい人にはぜひおすすめしたい。

スラムドッグミリオネアの舞台となったダラヴィは、アジアでもっとも有名なスラムの一つとなった。

浮き彫りになる問題点

ここまで見ていくとダラヴィの住民たちが過ごす日常と、興味本位で訪れる旅行者が期待するスラムとのズレが見えてくる。

裕福な日本で育った若者からすれば、スラムがどういう場所か気になるのは当然。だが有名な場所をスラムと定義し、その場所の住民を動物園の動物のような扱いで写真をとるのは違う。

ネット上には「アジア最大スラムのダラヴィに行ってみた」などの安易な記事が見られるが、彼らの真似をすることは決しておすすめしない。ダラヴィは安全な場所だ。だけど動物園じゃない。覚えておこう。