ベネズエラの世界最高層スラム街ダビドの塔の実情を知る

中南米に位置するベネズエラという国は、多くの日本人からすればイメージが本当に薄い場所だろう。メジャーリーグが好きならベネズエラ出身の野球選手を知っている人もいるだろうが、それ以外は情報が皆無。日本のメディアはベネズエラのことを意図的に避けているようにも思える。

この国を覆う貧困の闇は深く長い。世界最恐都市のひとつ、カラカスにそびえたつ魔のスラムタワーの存在をご存じだろうか?

ベネズエラの貧困問題


by Zaprittsky

ベネズエラの歴史は悲惨そのものだ。ほかの中南米諸国と同様に、古くからスペインの植民地として支配され、主体的な経済活動が一切育ってこなかった。たくさんの血を流し、苦労して手に入れた独立後も政権は脆弱。無能な独裁者ばかりがこの国を指揮していった。

あまり知られていないが、ベネズエラの地下には世界一の油田が眠っている。世界一の石油産出国はサウジアラビアではなくベネズエラなのだ。しかし無能な独裁者たちはこの最強の資源を使いこなせない

油田の利権をめぐって抗争ばかりを繰り広げ、肝心の産出設備などが十分に用意できていないのだ。そのせいでベネズエラは一部でガソリンを輸入している。こんなに馬鹿らしい事案は世界でも類を見ないだろう。

独裁者の謎の政策により国内経済はいつも大混乱。パンやトイレットペーパーなど最低限の生活物資すら街から消えることも多く、そのたびに動乱やデモが起きる。市民と警察は衝突して死者が出るし、動乱のせいでさらに経済は混乱する。負の連鎖が止まらないのだ。

ダビドの塔はそんな政治経済の混乱の中で誕生したビルだ。ベネズエラで3番目に高い高層ビルは、いろんな理由で工事が途中でストップしてしまう。何と独裁者はそこにギャングメンバーや貧しい人々が住むことを公式に許可したのだ。

ダビドの塔の生活と犯罪


by Cabruta08

ダビドの塔があるベネズエラの首都カラカスは、世界でも最恐クラスの凶悪都市だ。何しろ計算上20分に一回は殺人事件が起きており、強盗なんて日常茶飯事なので誰も驚かない。犯罪者はほぼ必ず銃を持っている。

治安悪化の理由はもちろん政治と経済の混乱だ。もう国自体が機能停止している状態なので、犯罪者にとってはパラダイス。逆に犯罪者にならない理由がないような、世紀末的荒廃状態が横行している。

そんな中でもダビドの塔の恐ろしさは桁違いだろう。なにしろ住民の大半はギャングやマフィアのメンバーなのだから、我々が想定するような価値観なんて一切通用しない。そこでは悪の限りが尽くされ、善意なんて言葉は存在すらしないのだ。

ダビドの塔の主役はドラッグだ。ここではコカインやヘロインをはじめ、粗悪品から高級品まであらゆる麻薬が横行している。ドラッグは公然と取引され、タワー内には麻薬中毒者たちが徘徊する。酩酊した彼らは強盗でもレイプでもなんでもする。

ドラッグの取引にトラブルがあれば即銃撃戦の始まりだ。ダビドの塔には警察すら立ち入らないため、すべての正義は暴力によってのみ成り立つ。弱者の権利なんて一切ない世界だ。

ダビドの塔の変遷

長い間無法地帯の世界最高層スラムとして君臨したダビドの塔は、2014年を境に解体への道を歩み始めた。一時は1000世帯3000人以上が居住したが、住民には政府が用意した低所得者向け住宅への移動が促されたのだ。

確かに首都のど真ん中に超高層のスラムビルがあるなんて、一つの国として容認できるはずがない。ただしこれを認めたのも国である。振り回されるスラム住民が不憫でたまらない。

ベネズエラの貧困を描いた映画

ベネズエラの貧困に触れたいなら「ベネズエラ・サバイバル」が秀逸だろう。ここで描かれる貧困や暴力の描写は酷くリアルで、実際に誘拐にあったことのある監督の経験が生かされている。

この映画を見ればベネズエラに行ってみたいなんて気持ちは一瞬で吹き飛ぶし、裕福な日本に生まれてよかったと再認識できるだろう。