ケニアのアフリカ最大スラム街キベラの実態を知る

日本からは遠く離れたアフリカの大地。広大な土地で貧富の概念すら持たずに生活してきた人々は、いつの間にか植民地支配と資本主義に汚され、スラムの住民として不自由な生活を強いられるようになった。

ケニアにある東アフリカ最大のスラム街、キベラはどのように成り立っていったのか。今どのような問題を抱え、人々はどのように生活しているのか。

キベラスラムの成り立ち


by ICMA Photos

元々アフリカに貧困なんて存在しなかった。人々には土地の所有という概念すらなく、野生動物と同様に大地の恵みを皆で享受し、平和に何不自由なく生活していたのだ。それをぶち壊したのがイギリスによる植民地支配だ。

イギリスはケニアの中から涼しく過ごしやすい土地を選定し、そこを白人専用の土地と決めた。もともとその地域に暮らしていた住民は強制的に移動を強いられる。もちろん金なんて支払われないし、反抗すれば殺されるだけだ。

白人専用の土地をより快適なものとするため、鉄道建設などの工事が始まる。そこで必要になったのが安価な労働力で、もちろんこれも奴隷が使われる。スーダン人などが労働力として強制連行させられた

彼らは朝から晩まで労働を強いられ、住居すら与えられることはなかった。そこで工事現場近くの川沿いに集まる形で小屋を作り、生活をするようになった。これがキベラスラムの最初の形だ。

彼らが住むことを許されたわずかな土地は、高温多湿の低地で農作物の耕作に適さず、衛生状態は当初から最悪だった。そこにさらなる出稼ぎ労働者などが流れ込み、スラム人口は徐々に拡大した。

キベラスラムの歴史を平等な目で見ていくと、どう考えてもスラムの住民に罪はないことが理解できるケニアの貧困はイギリス人によって意図的に作られたものであり、スラムの住民の怠惰な性質によるものではない。

キベラスラムの生活


by Christine Olson

現在キベラスラムには100万人を超える人たちが暮らしている。一部の富裕層を除けば家にトイレやシャワーなどの設備はなく、公衆トイレが使用される。しかしその数はわずか600とも言われ、どう計算しても公衆トイレでは数が足りない。

結果的に糞尿は垂れ流し状態。あらゆる路地は住民たちの糞尿で埋め尽くされ、信じられないほどの悪臭を放つ。感染症が蔓延するのは当然だろう。

もともと不法占拠同然で始まったキベラスラムにも、土地の所有者が存在する。そのため住民たちは毎月安くない金額の家賃を納める必要がある。土地の所有者はスラム内の富裕層やマフィア。スラム内にも如実な貧富の差が存在する。

スラム内は上水道の整備もほとんどされていないため、住民は飲み水を購入する必要がある。その水の値段は普通の5倍程度貧者がさらに搾取される地獄のような場所、それがキベラスラムだ。

文化的に子だくさんが好まれる性質はスラム内も同じ。幸いなことにスラム内には各国のNGOが建設した学校が相当数運営されており、だれでも無料で教育を受けられる環境がある。それでも労働力として使われるために、学校に通わせてもらえない子供だって存在する。

キベラスラムに蔓延る犯罪

スラムのスタディーツアーなどでキベラを訪れれば、意外なほど平和という印象を受ける人が多い。しかしこれは昼間の安全な場所の話。子供たちが無邪気に笑う裏側で、暴力の限りが尽くされている現状がある。

最も深刻なのがレイプだ。スラム内のほとんど女性は年頃に達する前にレイプされ、強制的に売春を強いられる。中には10歳に満たない売春婦も存在するという。目をそらしたくなるがこれが現実だ。

金目当ての強盗や殺人も日常茶飯事。キベラスラムで毎日何件の殺人事件が起きているかは把握すら不可能。それは警察が立ち入ることがないから。たとえ警察の目の前で殺人が起きても逮捕されるとは限らない。たとえ逮捕されてもワイロを支払えば釈放される。

過酷な現実から目を背けるため、粗悪なドラッグやシンナーは子供にまで蔓延している。そのため30歳以下で死亡する人も全く珍しくない。

キベラスラムと日本人

植民地支配により悲惨の極みに苦しむキベラスラム。そんな状況を少しでも良くしたいと奮闘する個人やNGOは数多い中でも日本人の早川千晶さんはキベラスラムに寄り添い、長年支援を続ける重要人物の一人だ

彼女は「マゴソスクール」という学校をスラム内で運営するなどの活動を行っている。日本発、現地発のスタディーツアーも行っているので、興味がある人は見てみてほしい。

マゴソスクールを支える会

マゴソさんのように身柄の正しいNGO等のスタディーツアーを除けば、旅行者が安易キベラスラムに立ち入るのは好ましくない。それは自身の身の安全の問題だけじゃない。動物園の動物扱いを受ける人の気持ちを考えるべき。

キベラスラムを描いた映画

キベラスラムを舞台にした映画といえば「ナイロビの蜂」が秀逸。貧困問題というよりは国の腐敗を描いた作品だが、そこに登場するスラムの様子は生々しい。フィクションながら毒々しいほどの現実感を伴ってみるものを刺激する。

これがイギリス人監督による作品というのがなんとも言えない部分。どちらにせよ後味は決して良くない。

歪んだ植民地支配による弊害は、何十年経った現在でも解決されることなく、人々の生活を苦しめている。この問題に解決など存在するのだろうか。広大なキベラスラムを見ていると救いようのない気持ちに襲われる。